トラパニ
レモン
トラパニからバスで行ったところに、セジェスタ遺跡があります。

バスを降りて、大神殿をぐるっと回ってみました。そこから劇場へ行こうとしましたが、けっこうな道のりです。道は勾配になっていて、うす雲の日なのに、ちょっと汗ばんできました。この町を造ったセジェスタ人の苦労が偲ばれます。周りに遠足の小学生がたくさんいて、彼らも劇場に向かっているところでした。彼らの無邪気な話し声に元気がでてきました。その中の一人と挨拶をかわすと、あとからあとから子供たちが自己紹介をしに来ます。名前は多様でおぼえきれません。

キアラという透き通るような白い肌の女の子の胸に、月の意匠のペンダントがあり、私は訳してあげました。彼女はそこで初めてこのデザインの意味を知ったようです。

子供たちや先生と話しながら歩いていくと、いつの間にかどこかに行っていたアントニオが、ひょっこり顔をだしました。彼は野の花で小さな束をつくって、はにかみながら私に差し出しました。「ありがとう。とっても綺麗ね。」「どういたしまして。」覚えたての英語で答えます。まわりのみんなも、楽しそうに見ています。

ようやく劇場に着きました。丘の上に威風堂々とある劇場からは、夕暮れ時のパノラマが広がっていました。

セジェスタセジェスタ
トラパニの港へ行く途中、ある教会の扉が開いているのに気づきました。入ってみると、内部は、改修中のようで、そこここに、材料が置かれ、カバーで壁面が覆われています。天井に近い窓からやさしい明かりが漏れています。「いいですか?」箒であたりを掃いていたお姉さんに聞きました。「はいどうぞ。」彼女は笑顔で答えます。

しばらく見ていると、お坊さんが現れて言いました。「君はクリスチャンなの?イタリア語わかりますか?」彼は、そこにあったモニュメントについて説明してくれました。そばにいた学生風の男の子が英訳してくれます。帰る時、お坊さんは、トラパニの神話と写真の載っている小冊子を持たせてくれました。

あとで、駅のカフェに行ってみると、店員さんは、以前訪れた時と同じ人でした。コーヒーとお菓子を注文します。そこに、サングラスをかけた陽気なお兄さんが話しかけてきました。「これからどこに行くの?」「チュニスに」彼は「どうして行くの?シシリアだけで十分楽しめるよ。」

そこには二年前のある日曜日、長距離バスが不通で、半べそになっているときに出会ったタクシーの運転手さんがいました。彼は、私のことをすっかり忘れていましたが、柔和な笑顔はあの時と変わりません。

チュニスから帰る船で、トラパニ人と出会いました。彼は、風の街トラパニを包む海の色、どこまでも抜けるような青い瞳をしてるのです。
「シシリア人は素直であかるいね。」私が言うと、彼はにっこりして答えました。
「もちろんさ。僕たちはいつも太陽と一緒に暮らしているんだよ。」
トラパニ
戻る
home