|
|
「本当ですか?」
「きみ、どこから来たの?」
「外国。」
「ここ真っ直ぐ行ってね。」
「こっちだと思えないわ。」
「仕方ないなあ。送っていってあげるよ。」
「ここにバイクまわすから、ここでまってて。」
2分後、旅館の前にバイクは横付けされました。
「ホントホント、どうもありがと。」
旅館に入っていくと、
「あら〜。帰ってきたよ。戻ってこれるか心配してたんだよ。」
「道に迷っちゃった。」
「やっぱり。」
「それで、おばさんに書いて貰った住所で人に聞いたの。」
「だから、私の携帯番号もあげたでしょ。電話くれれば迎えにいったのに。」
おばさんは、ミヤコ蝶々みたいな口調でそういって、笑っていました。
その夜、また行水にいくと、
カウンターのおばさん達は私の事を覚えていました。
バケツにいっぱいにしたお湯を、ばしゃばしゃ浴びていると、急にドアが開きました。
はっと振り返ると、おばさんさんが、もう一つの桶にお湯をなみなみにして持ってきてくれたのでした。
「一つじゃたりないでしょ。」
すっかり体も綺麗になって、風呂を上がると、
「寒くない?」
「ちっとも。おやすみなさい!」
「お休み。」
私は残り少ない上海の日々を惜しみながら、せんべい蒲団にもぐりこみました。
| |
|
|