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土楼-永定

土楼
朝、厦門の長距離バス乗り場から、永定行きのバスが出発します。私は、何とか席を確保すると、あとは音楽を聴きながら揺られていくだけでした。
永定は、農村だと聞いていただけです。厦門の市街部を抜けて、家もまばらな道を行くと、だんだんワクワクしてきました。山間部に入ると、綺麗な川が自然のかたちのまま、木立越しに見えてきす。
「ここで降りて、一人で遊びたいな〜。」
しばらく行くと、バスは小さな村の広場でしばらく停車しました。家々の門には紅い紙が貼られ、老人は日向に椅子を出して休み、道にはニワトリが散歩してます。
「ああ、ここで降りてしばらく滞在したい!」
バスは更に田舎道を進んでいきます。すると、今まで切手でしか見たことのなかった、丸い屋根と中庭を持つ家が見えてきました。その、客家の住むという家は、そこここに現れるのです。そしてバスは、土楼という町の、円楼博物館の前で停車しました。

客と運転手は一斉に言いました。
「君は観光客でしょ?ここで見ていきなよ。」
「でも、ここで降りたら、今日中に永定に着けなくなっちゃう。」
「1時だよ、1時に、ここで待っていたらバスは君を拾うから。」
腕時計に目を遣ると、丁度正午でした。それで、バスを降りることにしました。降りたのは良かったけれど、私の荷物はめちゃくちゃ重いのです。なのに、博物館はとても広そうです。

そこに、バイクのおじさんが寄ってきて、
「おじさんのバイクで回ったら?5元でいいよ。」
「はい、はい、わかりました。」
それで、彼のバイクに乗ると、バイクは発進しましたが、博物館員に止められました。
「切符買ってないでしょ。」
「はいはい、40元。」
その時、荷物を背負ったままでもいいやと、思い直しました。それで、
「おじさん、やっぱり一人で見る。」
私はそれから20メートルくらい、緩い坂道を登りました。けれど、やっぱりもうダメです。そして、そこにいた若いお兄ちゃんのバイクに乗ることにしました。
「2元でいってあげるよ。」
彼は、強力なゴムひもで、私のリュックを器用にくくりつけました。二人は、大きな家を3軒観光することにしました。 一軒一軒について、彼が説明してくれます。中に住む人々は、普通に暮らしていて、他人が入っていっても、平気でにこにこしているのは奇妙な感じでした。私の方がドギマギして、いちいち「こんにちは。」と、声をかけました。

川を隔てた建物を背後に歩いている時、
「君の写真を撮ってあげるよ。」
と、彼は言いました。私は、欲しくないと言って、そこに住んでいた豚に声をかけて、シャッターを切りました。豚はご飯と思って、鼻先を必死に動かします。橋を渡ると、もう一つ円楼があって、
「この前で撮ってあげるよ。」
再び彼は言いました。
「うん。」
お兄ちゃんは、シャッターを押すと、少し満足げでした。私は、
「水、水(を触ってみたい)」
と言って、お手洗いはあそこだよ、と言う彼を残し、川に降りると水遊びをしました。彼は手持ぶたさに待っています。
「変わってるねって、たまに言われるんだ。」
「そうだよ。君は皆が好きな場所でちっとも写真を撮らないで、豚とか、鶏ばっかり撮ってる…。ねえ、これから、もっと大きな円楼見に行ってみない?」
「え、でも、私そろそろ帰らなくちゃ。永定にいくバスが来るんだもの。」
「バスはもうないよ。一日1本しかないんだよ。」
「でも、まだ45分でしょ。」
彼は私の腕時計を一瞥するといいました。
「君の時計は止まっているよ。」
「まじ〜?」
「もう2時45分だよ。」
「でも私、どうしても今日永定に行きたい。明日は厦門に帰らなくちゃいけないもの。」

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