|
「君はもう、この町の虜になったかい?」 ラグーサで知り合った男の子は聞きました。
ラグーサの旧市街は入り組んでいて、狭い小道を抜けるたびに、新しい視界があらわれます。 夜になると、家々の軒先にだいだい色の明かりがともり、闇の中にこの小さな町が浮かび上がります。それはまるで、小さなころに見た絵本の世界でした。
「貴方にとって、ここは生活だけれど、私にとっては夢なのよ。」 私は言いました。 「君だけじゃないさ、僕にとってもここは夢なんだ……。」
そう言う彼の瞳をみると、この町を囲む瑞々しい緑の谷を映したような、エメラルドの色をしていました。
|
|