もう明日は帰国という日です。私達は朝早くに前門まで行って、Kさんはバスのツアーを探してくれました。
車に乗ってみると、人でいっぱいで、みんな北京でないところから来た人たちのようです。バスは、明代の名所を時間をかけて周りながら、最後にようやく万里の長城に到着しました。
「時間がないから、いそいで!」Sちゃんが言います。
彼は、「毛さんの言葉が刻まれている石碑まで行かないとだめなんだよ!!」
そういうと、急な石の階段を一生懸命登り始めました。私も、Sちゃんのあとを、Kさんとついていきます。けれど、勾配がとてもきつくて、途中ゆっくりになってしまうのです。身体は熱くなってきて、私は二枚着ていた厚手のコートの一枚を脱ぎました。軽くなった服の隙間から細い風が入って、火照った肌はひんやりしました。
やっと高いところまでくると、辺りの空気は冷たく硬いみたいでした。
長城は峰にそって何処までも続いて、その峰々が幾つも交差したシルエットになって、大海原をつくっていました。そのうちに、太陽は沈みだして、別れが名残り惜しいみたいな、強い光線をおくってくるのです。私はちょっぴり恍惚として、しばらくそこに立っていました。
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