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遠かった旅が終わり、バスは街に戻ってきました。私達はレストランに入って、たのしい夕食です。Kさんは、私の好きなおかずを憶えていて、その夜も、また注文してくれました。でてくる料理はどれも美味しくて、私の知らない味ばかりでした。
食事を終えて、ホテルに戻ろうと、3人は地下通路にもぐりました。
薄暗い通路を抜けて、上りの階段をいくとき、ふと気づいたようにKさんが足を止めると、私達を振り返って言いました。「メリークリスマス!」
Sちゃんと私は、そこで気がついたみたいに、「メリークリスマス!」と言い合って、辺りは一瞬西洋の空気になりました。今日はクリスマスイブでした。
少し歩くと露店が2、3、強いライトをともしています。果物屋さんのまえに来ると、バナナや梨がきれいに顔をそろえて並んでいます。SちゃんとKさんは林檎を手にとって見ていました。そのうち、奥にある、白いざぶとんにのった林檎を数個、おじさんにたのみました。部屋に戻った後で食べるように、私に買ってくれたのです。
ホテルの近くのみちに、大きな木が街灯に照らされて、白く浮かび上がって見えます。その枝をかいくぐるようにして、小さな白い三日月が、弱い光でこちらを見ていました。
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