チュニジアの小島での年越し
Jan, 2012
/ チュニジア ケルケナ kerkennah /漁村と椰子とモスクの島
チュニジアでの年越しをケルケナ島に決めた私は、早朝の便で島に渡るため、夜明け前にサファックスの宿を出た。船が岸を離れてから一時間もかからずにシディ・ユセフの港に着くのだ。
港から島の中心にあるレムラという町までバスに乗り、宿にチェックインすると、
「今夜はパーティーがあるから君も参加しないかい?」
と宿の主人が誘ってくれた。何も予定がない私には断る理由がない。OKして荷物を置き、さっそく島の散策に出ることにした。
町から東側の海辺に出てみるとヘラサギが餌を探して浅瀬を歩いていた。
日が暮れて集まったのは、世界各国から来た若者たちで、お互いネットのコミュニティで知り合ったのだという。欧州人が多かったが、アジアの子たちもいた。
パーティーはチュニジア伝統音楽から始まり、みんなで大晦日の料理を堪能した。私ははじめ彼らに交じって談笑していたが、最後はスタッフたちと一緒にいた。その中の一人がナッツを新聞紙に包んで私にくれたのだった。 パーティーが佳境に入り、カウントダウンが始まるころ、星を見たいからと言い訳して自室にもどることにした。
年明けの嬌声を聞いたのはベッドの中だった。
新年の風
翌朝、さわやかな夜明けだった。宿を発つ準備をしている若者たちに別れを告げ、ひとりで散歩に出かけた。
今度は西に行ってみる。途中、喫茶店を過ぎると昨夜ナッツをくれたスタッフに呼び止められた。そこが彼の家なのだ。彼はお父さんとかわいい子供たちを紹介してくれた。
彼らと別れ、歩いていく先に見えるものは、右手に椰子の木々やモスクが、左手に海があるだけで道なりにに続く民家がこの島の息遣いを見せていた。私は、珍しい草花や椰子の葉を揺らす心地よい風を楽しんだ。
海に行ってみると、ウミネコたちが海上で羽を休めている。少し近寄ると、彼らは一斉に飛び立ってしまった。
町に戻り、海辺に夕日を見に行った。何枚か写真を撮って戻ろうとすると、そばにいた男が「戻っちゃだめだよ」と私を引き留める。
それで、しばらく待っていると、夕日の紅が見る見るうちに深くなり、空一面を鮮やかなオレンジ色に染めていったのだった。日が椰子の木の下に落ちると、空はオレンジから淡いブルーの諧調になり、やがてレムラの町に藍色の帳が下りるのだった。
ケルケナ諸島 チュニス東部のガベス湾に浮かぶ島。1941年のタリゴ船団の戦いの舞台。