福建 上海へ 浙江省へ 北方へ
土楼-永定

湖坑

「ほら、みてごらん、バスは一日一本しかないんだよ。」
知らない内に、周りに人が集まってきて、みんなで私を説得しました。
「どうしようもないの〜?」
「なら、バイクで行こう。ほら、後ろにのって。」
お兄ちゃんがいいました。
私は再び後部座席にまたがると、バイクは永定への道を走り出しました。風が直接身体に当たるのが、とても気持ちいいのです。私は後ろに流れていく稲刈りの終わった田圃、煉瓦づくりの家、それを取り囲むようにしてそびえる山々、青く透きとおる空の色を楽しんでいました。
「寒い?」
「寒くない!」
お昼で日差しもあたたかいのに、山道を行くと、さすがに冷たく感じます。けれど私は寒いと答えたくありませんでした。

後ろから何台かトラックがやってきては、越していきます。ここにはガードレールがなく、私達にはヘルメットがありません。
「怖がらなくてもいいよ。」
彼は、私の気持ちがわかるように、そんなことを口にしました。

私は土楼から永定までの道のりが、思ったより長いことに、やっと気づきました。お兄ちゃんに、申し訳ない気持ちがしました。

「君は幾つ?」
「24。」
私はサバを読みました。
「俺はもう30だよ。」
「ここで生まれたの?」
「そう。」

バイクは、幾つかの小さな町を抜けて、ようやく永定にたどり着きました。ここまできて、永定は農村でないことが判りました。
二人は、石段を登った所にある公園のベンチに腰を下ろしました。
「君は、今日ここに泊まるつもり?」
「うん、この街を少し見たら、朝厦門に帰るわ。」
「湖杭まで行ったら?」
「どうして?」
「そこだと、ここよりも厦門行きのバスが多いから。」
「でも、もう疲れちゃった。お腹もすいたし。湖杭までだと、幾らかかるの?」
「お金いらないよ。」
「なんで?」
「俺が土楼に帰るから。湖坑は土楼の手前の町さ。」
湖坑 湖坑

前へ home 次へ