福建 上海へ 浙江省へ 北方へ
土楼-永定

私達は再びエンジン音の中にいました。
彼は私の為に、繁華街をゆっくり一周して、それから来た道を戻りました。帰りはもっと寒かった筈なのに、二人はお互いに寒くないと言い張りました。

山の上を行くと、山間部に消える落日が素晴らしくロマンチックで、しばらく行ったところで停めてもらいました。しかし、そこはあのように綺麗な場所ではありません。どうやって撮ろうか、迷っていると、彼がバイクを降りて私の所にやってきました。
「電線が多くて、綺麗に撮れないよ。行こう。」
湖坑 湖坑
湖坑の町につくと、お兄ちゃんは一軒の旅館の前で停まって、おばさんに値段の交渉をしてくれました。
「荷物を部屋まで運ぼうか?」
そう彼が言ったとき、
「私がやるわ。」
宿のお姉さんがにこやかに言いました。
私は彼女と部屋に荷物を運んで、階下におりていくと、彼の姿がありません。入り口のバイクも見えません。
「彼は?」
「家に帰ったわよ。」
おばさんは答えました。

その時になって、私は彼の名前すら聞いていなかった事に、初めて気づきました。

日が落ちてから、あたりを散歩しました。町はとても小さくて、すぐに灯りも何もないところにきてしまいます。町はずれのバイク屋の犬が、覚えのない臭いに吠え始めました。

見上げると、空の高いところに、満点の星が静かに瞬いているのでした。

前へ home 次へ